これといった予定もなく、相棒のハッピーはシャルルの元へと飛び立ってしまい、暇を持て余した穏やかな午後。ナツはいつものようにルーシィの家で過ごしていた。
彼女をからかい、他愛ない話で笑い合ううちに、窓の外は陽が落ち始め、辺りを赤く染めつつあった。
「うし、そろそろ帰るか」
「あれ。今日はあっさり帰るのね?」
「おう。悪いなルーシィ」
「あたし居て欲しいなんて一言も言ってないけど!?」
ルーシィの非難する声を背に受けながら、ナツはひらりと窓枠に飛び乗った。
「あのね…扉から出なさいよ…」
「いつものことだろ?諦めろって」
「これが当然になるなんて認めたくないわ…」
窓からの出入りは随分前から恒例となっているが、未だに文句を言うルーシィに、ナツは笑いを抑え切れない。
諦めの悪い所は彼女の良さであり、ナツが好ましく思っている面でもあった。
「じゃあまたな、ルーシィ」
「…ん。またね」
窓に寄りながら、ルーシィは別れの言葉を返した。
逆光で翳ったナツの顔を見上げ、緩く笑みを向ける。
その表情を見たナツは、道へ降りようと乗り出した姿勢のまま、動きを止めた。
――微笑んでいる筈なのに、酷く寂しいと言われた気がして。
きゅうと胸が引き絞られるような感覚がナツを襲った。
自分ばかりが彼女と共にありたいと思っていたが…。
離れたくないのは、傍に居たいのは……きっと彼女も同じ。
湧き上がった衝動のままに、ナツはルーシィを掻き抱いた。耳元で息を呑む音が聞こえたが、無視して後頭部に手を回す。
上向かせて視線を合わせると、薄く開かれた色付く其処に―――ゆっくりと口付けを落とした。
「…ルーシィ」
吐息が触れ合う距離で、彼女の名を呼ぶ。ふるりと睫毛が震え、ゆっくりと開かれた瞳には、薄らと熱が帯びていた。
「ナツ…」
細く吐き出された声に惹かれるように、ナツは再び唇を合わせた。
今まで一度だって、相手をどう想っているか、言葉にしたことなんて無かったけれど。
―――お互いに、こうなることを何処かでは分かっていたんだ。
夕陽に染め上げられた部屋の中、脳の奥に生まれた小さな確信を感じながら、二人はゆっくりと熱に溺れていった。